クイントエッセンス誌 2000年 10月 一歩進んだ歯科医院でのパソコン利用法
「MIC社 レセコン "LAPEC"」
医療現場におけるコンピュータ
あらゆる分野で急速に情報化が進む中、業務のシステム化の波は医療現場において
も例外ではありません。
第三次産業革命/情報通信産業革命とも呼ばれている現在、医療現場での情報化――
ドクターと患者さんとのコミュニケーションツールとして、電子カルテを見据えたコ
ンピュータとネットワークは不可欠のものになろうとしています。
多様化が進む歯科医院業務の中で、業務支援のコンピュータとして当院では、ミッ
ク社の歯科総合情報システム「ラペック」を選択しました。私にとってのラペックのポ
イントを7つに絞り、日常業務での感想を交えながらお話させて頂きました。これか
らコンピュータを導入される先生方のご参考になれば幸いです。
LAPECのポイント
・ネットワーク対応
パソコンの得意とするところのひとつは、何と言ってもネットワークでしょう。
情報を分散して保存し、周辺機器の共有使用、いくつもの仕事を同時進行でこなせるの
は、やはり安定したOSを使っているからでしょう。最も一般的なウインドウズ98や
2000ともネットワークでき、分担作業ができるのは使ってみてその便利さを実感し
ます。
繋いでいるそれぞれのパソコンでカルテ入力、会計や予約、領収書の発行、さら
にレセプトチェックや発行まで、どの場所からも同じようにできるのはありがたいで
すね。ハードウェア-はこわれもの、数年使っていれば突然動かなくなる事だってあり
ます。ネットワークしてあれば、そのうちのひとつが壊れたとしても診療の大きな支障に
はならないでしょう。
また、旧くなったハードはその都度、ひとつずつ換えていくことも可能なため、シ
ステムの一斉入れ替えの負担はなくなるでしょう。ソフトだけ最新のものになっていれ
ば、将来的にもまったく問題ないでしょう。
家電売り場にあるウインドウズ入門機でさえもサーバーとして使うことができ、
もちろんクライアント機も同様に汎用機で十分ということは、ほんの数年前では考え
られなかったこと。今更サーバー機に高価で汎用性のない専用機を揃えなくていいのは
安心です。
・充実したカルテ機能
カルテの手書きには捨てがたいものがあります。自由に書き込めること、書いたと
きの気持ちが文字にあらわれたりもします。カルテを見直したとき、その時の情景を思
い出したりもします。しかしながらこの捨てがたい気持ちも大きく揺らぎました。
カルテに記入することがらは意外と同じ文章が多いのです。定形文を作っておけばそ
こから自由に選ぶことができるのです。口腔衛生指導文や歯周指導文は指導内容を詳し
く書かなければなりません。指導内容をいくつかのパターンから選んで組み合わせれば
ほとんどの患者さんにあてはまる指導文を作ることができます。はたして手書きでそこ
までできるでしょうか?ボールペンからマウスへ筆記具は変わりつつあります。定形文
や入力用集合をカスタマイズできるのはたいへんありがたいと思います。
ラペックの開発コンセプトに"パーフェクトカルテを作成する"とあるようですが、
最近ではこちらの方が患者さんの情報をより多く正確に書き込めるようになってきまし
た。
めまぐるしく変わる保険点数表、改正のたびに点数を覚えるのは大変です。ほと
んどの処置は候補処置の中に表示されるのので、マウスで選ぶだけという操作は余計な
神経を使わずに我々の負担も少なくなりました。
カルテの入力をパソコンでするというと“キーボードをたたく”という先入観をお持
ちの方が多いと思います。しかしながら、実際はほとんどの作業を“マウス”で行い
ます。濡れた手や埃っぽい診療室の条件の中で、キーボードの管理は気を使うもの、
マウスなら2千円前後でどこでも手に入ります。忙しい診療の合間に気軽に入力でき
るのは安心です
ネットワークで繋いであるのでどこでも入力どこでもチェック、どこからでもプ
リント、この柔軟性は使ってみると本当に便利なことがわかります。
いつでもどこでも待たずに入力できる環境は、忙しい我々にとって必要な環境でし
た。
私は、市販のソフトや有志の先生方が作られた歯科用語辞書(5600語)もイ
ンストールしていますので、入力時の歯科専門用語も一発変換です。たとえば“じょう
しんしょうたい”も上唇小帯にすぐ変換してくれます。これらの作業を手作業で単語
登録していくには計り知れない努力が必要です。これも互換性のあるOSで稼動する
ソフトならではの恩恵でしょう。
・チェアサイドから伝達事項を受付に転送する便利な申し送り機能
「○○さんは今度抜歯なので前日からお薬をのむように言ってください」
「××さんは予約をよくキャンセルしますのでご都合をしっかり聞いてください」
受付への伝達事項は、重要なことや他に聞かれてたくないこと、いろいろありま
す。受付も先生も忙しいときは患者さんの大切な伝達事項も忘れてしまうことだってあり
ます。口頭で伝えるより、メモで伝えるよりもこの機能がいかにスマートかわかり
ます。
・選べるハード
ソフトだけを販売するのはレセコンメーカーとしてはサポートに苦労するのは目
に見えています。そこをあえてしているのは感心します。
ソフトは複雑で変化の多いOSの上で動くもの、汎用性のあるウインドウズなら新
たに自分で色々なアプリケーションソフトを使ってみたくなる。他のアプリケーション
の影響で不都合がある事だって考えられます。
幸いにして私はパソコン仲間がたくさんいますので不都合は自分たちで解決していま
すが、ラペック以外の原因の不都合はサポートしきれないのではないでしょうか?これ
は余計な心配か?
・レーザープリンタ出力
診療室はそれでなくとも雑音の多いところ、静かなレーザープリンターで診療中
にも打ち出せるのはありがたいですね。レセプトのプリントの順番も綴じる順番ですか
ら、並べ替えの手間はまったくありません。また、印刷がずれることもありませんでし
た。
総括表も、専用紙に直接印字なので、転記しなくてよいので助かっています。
私はまだ試していませんが、白紙の用紙に枠ごと印字するオーバーレイ印刷機能も
興味あるところ、点数改正のたびにレセプト用紙を余らせたり、不足して至急送って
もらったりという心配はなくなります。これらの便利さとプリンターのトナーカート
リッジの価格を比べながら選択を検討中のところです。
・他社画像アプリケーションソフトとの併用
私はデジタルカメラとSchick社のデジタルレントゲンを導入していますが、同じ
パソコンでデーターの管理ができるのはたいへん便利です。汎用性のあるOSならで
はのできることでしょう。将来デジタルカメラやデジタルレントゲン等の機器を導入予
定でしたら新たにパソコンを買い足す必要はありません。
・様々な他のアプリケーションソフトが利用可能なデータ出力機能
データー出力形式で最も一般的なCSV方式。最もポピュラーなマイクロソフ
トExcelやデータベースソフトAccess、使いやすいファイルメーカーPro、
はがきソ
フトの住所録や、ファックスソフトの電話帳にも認識され、データーのコンバートがで
きるのはとても便利。これからの汎用性と発展性を考えていると思います。
私は患者さんの氏名、生年月日、電話番号、カルテ番号だけのデータベースを作り、
シャープ社のザウルスに入れていつも持ち歩いています。
また、毎月の保険点数、自費金額等のデータベースも同様に別のソフト(Excel)に
て集計表を作っております。
歯科用コンピュータのあり方
パソコンのハード、ソフトどちらも進化したのは、メーカーの努力だけではあり
ません。ユーザーからの声やアイデア、改良によって底辺から進化したといっても過言
ではありません。多くのメーカーはユーザーのそうした意見やアイデアによって成り立っ
ています。
その最も大きな手段はネット上で繰り広げられる“ユーザーズフォーラム”なので
す。このユーザー同士のインターネットを利用したいわゆる井戸端会議的フォーラムに
よってさまざまな改良や工夫がなされました。
ラペックではユーザーから自然発生的に始まったフォーラム“LAPEC-ML”に
よってたくさんのユーザーからの意見や要望が出されました。
それについてメーカーは少しずつ確実に改良をしてくれています。
また、このMLから、今まで気づかなかった使い方や、便利なデータの利用法、ま
たユーザー同士のつながりがもてるのは大きな収穫でした。
ラペック開発スタンスに“1メーカーで院内ネットワーク環境の全てをカバーする
のではなく、医院独自のネットワークシステム構築の実現に向け、お客様との協力のも
とにベストソリューションを提供していきたいと考えております。”とあります。企業
の理念にこのような発想があったことは単なる偶然でしょうか?
レセコンメーカーでユーザーズフォーラムをもっているのはLAPECだけです。
今後の更なる発展を期待しているところです。
2000年7月 (ちょっとこのレセコンを誉めすぎたか?)
私はMIC社のまわしものではありませんが一応、MIC社はhttp://www.mic.co.jp/です。