一般開業医の画像、映像を利用した診療について  近年、ビデオカメラを始めとする映像機器の小型高性能、低価格化、また、パーソナルコンピュータの大衆化は、めざましく、最近ではデパートの家電品売場や文房具売場にて高性能な一体型パソコンが安価に手軽に買えるようになってきた。また、ソフトの面でもグラフィクスソフト、画像圧縮やデータベースソフト等で便利なものが充実し簡単にに手に入る様になってきた。我々の業界にもそのような先端技術の影響の波は確実に押し寄せており、これからの診療に役立つ、より多くの利用が望まれるところである。ここに私の診療室で使用しているシステムを紹介するとともに今後の課題等について考察してみた。     写真の管理の合理化 スライド、ネガあるいはプリントの整理と管理は多くの時間とスペースを必要とする。私の診療室では比較的頻繁に写真を撮る事が多く、また、矯正治療を行なっていることもあって今までの16年間で写真の量は莫大な量になってしまった。写真とネガフィルムはレントゲン室に保管しているが、狭い部屋がさらに狭くなってそろそろ限界に近づいてきた。たとえば、矯正治療終了時患者さんに術前の写真をさしあげているが、それらの患者さん毎の検索、焼き増しに管理者はかなりの時間と手間を費やしていた。ポジフィルムを利用されている診療所も同様の悩みがあるのではないだろうか。 ディジタルカメラはフィルムを使うことなく画像をディジタル信号として電気的に記録、再生するもので、モニターに接続すればその場で画像を見ることが出来る。また、画像信号はフラッシュメモリーカードやフロッピーディスクあるいは、本体メモリーに記録する などさまざまなタイプがある。歯科用として(株)ヨシダより接写レンズユニットを含めたものが発売されているが、 今回、このフジックスDS200Fとファイル部DF10を利用することによって、かなりの省力化と省スペースに役立てることができた。 このディジタルカメラは2メガバイトのフラッシュメモリーカードに40枚の画像を記憶する事ができるコンパクトカメラで、接写用の、レンズユニットを装着し撮影するが、撮影した画像は直ちにモニターで見る事ができる。その場で画像の良し悪しが判断でき、構図、フォーカスが悪いときすぐに撮りなおしできるのが、大きな利点 である。また、アシスタントに決められたアングルで撮るように指導しておけば、我々の診療の手を休めることなく貴重な情報を記録、保存することが出来る。  フラッシュメモリーカードに記憶された画像データーはファイル部、DF10にて2HDフロッピーディスクにその場でコピーすることができる。 1枚のフロッピーディスクには29枚の画像を圧縮記録できるので1人の患者さんに1枚のディスクでほぼまにあってしまう。データーは日付、時間も自動的に記憶されているので整理は楽である。また、なによりありがたいのは2HDのフロッピーディスクが1枚約50円から100円で購入できることである。画質の鮮明さはネガフィルム+プリントやポジフィルム+プリントを利用するよりも少し劣るものの、ランニングコストや省スペースの点も満足のいく物である。    利用 ブラッシング指導の効果判定、 患者さんの磨きくせ、磨きにくいところを歯コウ染色によって磨き残し傾向を理解してもらう。また、前回との比較も楽である。 技工指示書に添える資料として。 ポーセレン等前装冠の形成印象時、シェードガイドと一緒に撮影しプリントし、色やステインの指示をより正確に出すことができる。また、義歯咬合採得時や排列試適時、顔貌から人工歯の選択あるいは下顔面の長さの基準測定としてプリントして利用する。 このビデオプリンターは画面を4または16分割できるので治療前後の比較が画面上でまた、プリント上で見られるので一目凌然である。普通の写真プリントから比べれば画質は少し劣るがB6判4分割なら殆ど問題なく見ることができる。 さらに、このビデオプリンターは口腔内用に色調整されている為比較的近い色に再現されるようだ。 その他の利用法として 小さな子供の治療時あるいは健診の記録としてプリントしてさしあげても患者さんとの コミュニケーションの上でとても喜ばれるでしょう。    ビデオカメラについて 口腔内カメラはCCDカメラの小型化、高性能化にともない各社、歯科用として開発を進めているが、高画質、小型軽量化の他に、耐水性、光源の付与、さらには滅菌消毒の問題等少量生産の歯科用としては大きな難問がある。 私のところではアメリカINSIGHT社の口腔内カメラを購入して使っているが、前記の問題をほぼ克服し完成されたカメラと思われる。 このカメラ本体は小指の先ほどのカメラ先端に直径2ミリほどのレンズと2個の光源がつき焦点は0ー5センチメートルの範囲で自動に調整される全長20センチ重さ約150グラムの超軽量カメラである。出力端子はビデオ端子とs端子を備える、水平解像度400本以上の画質を得ることが出来る。 高倍率で、大臼歯が画面いっぱいに映し出すことができる。また、このカメラ用に開発された使い捨てプラスティックカバー によって衛生面の問題も克服されている。 口腔内では唾液、血液さらには形成時の飛沫からカメラを保護することができ便利である。 最後臼歯遠心部やブリッジポンティック内面、隣接面のプラークを高倍率で見ることが出来るので患者さんへの啓蒙には効果絶大と思われる。また、う蝕除去の様子をビデオテープに録画すればむし歯の恐さを知らしめるうえで強力なインパクトを持っている。  INSHIGHT社のユニットにはこのカメラの他にもう1台のCCDカメラが付属している。こちらも小型軽量であり10センチメートルから∞まで焦点を合わせることができ、主に顔貌や歯列全体の撮影に適している。口腔内、外によっていちいちレンズやアダプターの交換をしなくてすむので便利である。また、どちらも静止画像としてDF-10を利用してフロッピーディスクにも記録することが出来るが、前述のディジタルスカメラには画質はかなわない。いずれにしても両者の組み合せを利用することによって診療に大きく貢献することはまちがいないであろう。     今後の課題と考察 ディジタルカメラは商業印刷の分野では、印刷行程の短縮ツールとしてこのところ急速に活用されはじめて来ている。このようないわゆるプロ用カメラは100万ドット以上のCCDを持つ高性能、高価格(100万円から600万円もする)のものである。また、50万ドット以下のCCDをそなえたパーソナルやオフィス用として利用できる比較的低価格(それでも20万円前後する)のものも同時に開発されている。一般開業医としての購入を考えるとやはり後者の方を選択するのが一般的であろう。学会発表用のスライドあるいは製本出版用写真として利用しないのであれば、操作性、簡便さ、そして価格を考慮して充分な利用価値があると思う。この低価格版ディジタルカメラは現在、富士写真フィルムの他にApple,リコー、オリンパス光学工業、カシオ計算機など4社が発売しているが、パーソナル/オフィス用としての需要は多く、ちょっとした画像の記録、保存、電話回線を利用した画像情報交換、小人数でのプレゼンテーション用として、また、パソコンへの取込みも含めて今後大きく利用されていくであろう。DS200Fについては周辺機器を含めた低価格化、と他社製品に関しては口腔撮影用接写ユニットの開発が待たれるところだ。 また、私のところでは 画像保存にフロッピーディスクを利用しているが、保存方法が磁気であるため長期の保存に不安がある。 コンピューターに取り入れデータベース化することを考えているが、保存についてはハー ドディスク、光磁気ディス(MO)、あるいは最近開発されたDVD、等も考慮中である。また、コンピューター上でグラフィクスソフトを利用した治療後予測、顔貌の成長変化の予測等も手掛けてみたいと思っている。 参考文献  日経MAC 1995 4月号 ディジタルカメラを選ぶ  クイントエッセンス