千葉歯報  千葉歯報 1998年 12月号 HIROBA
       「雨降って血かたまる」 ファールチップが!

 今年の8月、病院に2日ほど入院する機会があった.その、2週間程前,子供と野
球をしていてファールチップが、右目に当たってうけた怪我が急に悪化し緑内症になっ
たためだ.
 病院に入院するのは初めてではないが、ここに入ると何か自分が罪を犯して収監
(こちらは経験がない)された様な気分になる.なにしろ,飯がまずい,消灯時間が
早い,さらに点滴のチュ−ブに至っては鎖に繋がれている囚人そのものだ。こんなこ
とを書くと一生懸命病院経営に努力されている方々、働いている方々に無礼千万なこ
とは十分承知である。退院してしまえば、「そんなこと病院なんだからあたりまえ、
なんて我がままな考えなんだろう」と思う。
以前、抜歯の患者さんにこんなジョークを言ったことがある.
「今日、歯を抜くことになりますがよろしいですか? 大丈夫、さいわい外は雨降り
だからきっと血はそんなに出ないと思いますよ.」
患者「?????」
「ほら、雨降って血固まるっていうでしょ、ハハハハハ」
患者「×××××?! 」
自分では患者さんをリラックスさせるつもりで言ったジョークがまるで受けないので
ある.考えて見れば当然である、本人にしてみれば自分の体の一部が今から取り除か
れようとしている瞬間である.初めてのことで、もしかして前日から頭の中はその事
でいっぱいだったかもしれない.自分のその軽率さを今でも時々思い出して苦笑いす
る.
病院にしても歯科医院にしても経営しているのは健常者である。医療機関の設計から
運営まで病人自身が参画したら素晴しいものが出来るような気がする。ひどい頭痛と
吐き気に苦しんだ2泊3日の入院体験、わがままな考えが頭をよぎったが、怪我をした
右目に一筋の光が差し込んだ良い経験ができたと思う。ファールチップに感謝する今
日この頃である。    1998.12